可愛いだけじゃないゾクッとさせるストーリーが子どもにも大人にも考える機会をくれる『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』をご紹介。
正解のない問いに対して、ちいかわはどう振る舞うのか
ロングランヒットを続ける『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の魅力はさまざまあるなか、ここではSEL(社会性と情動の学習)の視点で述べます。
一見子ども向けのアニメかなと思いきや、劇場公開が始まると「怖い」という投稿も散見されるようになりました。観てみると、表現は可愛くて軟らかいけれど、ちいかわ達に起こる出来事は確かに怖いです。そもそも本作は、「島に住む巨大な“セイレーン”が島民を次々と連れ去っているという事実を聞かされ、セイレーンの討伐計画に巻き込まれていく」(映画公式サイト)というストーリーなので、物々しさがあるわけです。
でも、本当にゾクッとさせられるのはクライマックスで明かされる秘密です。秘密を知ったキャラクターが複雑な心境になるのは当然でしょう。そして、この秘密にこそ、考えさせられる要素があります。
劇中では、秘密を知ったキャラクターの戸惑いと葛藤が描かれています。観客もそのキャラクターがどういう態度をとるのか、ドキドキしながら見守ることになります。なぜなら、善と悪がハッキリ区別できる事柄ではないからです。
本作で描かれている葛藤は、私達が日常で直面する葛藤そのものです。そして、本作に登場するキャラクター達は身近にいそうな性格だからこそ感情移入がしやすく、子どもにもわかりやすいストーリーとなっています。本作を観て、キャラクターと一緒に悩むことはとても有意義な疑似体験となります。子どもだけではなく大人でも、自ずと自分ならどうするかを考えながら観てしまう点で、本作はとても見応えがあります。その葛藤は、人間関係や人生観に関わります。そういう意味で社会性を育む学びとなり得ます。
また、一部のキャラクターは言葉を話し、それ以外のキャラクターは非言語でコミュニケーションをとっている点がユニークです。言葉を使わないキャラクターに関しては、仕草や表情で何を感じ、考えているのかを読み取る必要があります。だから、観客も自然に非言語コミュニケーションを疑似体験しているといえます。
私達は日常的なコミュニケーションにおいて、発せられた言葉を字義通りに受け取るだけではなく、隠された真意の有無を考える必要性があります。そういう意味で、言葉を使わないキャラクターの心情を読み取ろうとする観方は、私達の現実のコミュニケーションでも有用です。
以上の点から、本作はSELにも有用な題材といえます。エンタテインメントとして純粋に楽しめるのはもちろん、学びにもなるので一石二鳥です。子どもにも大人にもオススメしたい作品です。
レビューは姉妹サイトのトーキョー女子映画部に掲載しているので、そちらも良かったらお読みください。→こちら
映画ちいかわ 人魚の島のひみつ
2026年7月24日より全国公開中
東宝
監督:及川啓
声の出演:青木遥/田中誠人/小澤亜李/井口裕香/淺井孝行/内田雄馬/島袋美由利/春海百乃/最上嗣生/鈴木みのり
公式サイト
©ナガノ / 2026「映画ちいかわ」製作委員会
TEXT by 武内三穂
孤島の画像はAIで作成したイメージです。


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